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人は物語の中を生きている
人は物語の中を生きている
「話をしていたら、何となく整理ができてすっきりしました」
と言われたことが何回かあります。
問題を抱えている状態だと、自分の思いを爆発的に訴えかけてこられます。
例えば、私は人とコミュニケーションを取ることに苦手意識があって、今の職場に落ち着くまでに幾つか仕事を変わっているのですという話題の時、
「今の職場は、働き始めてどれくらいですか?」
「今の職場と前の職場の違いは何だと思われますか?」
「いつ頃からコミュニケーションが苦手だと感じていましたか?」等の質問をして話していくと、その方の中で整理や発見があったようで、解決策が出てこなくても「何とかなりそうです」と張りのある声で相談が終了したことがあります。
その時は、私の方があっけに取られましたが、同時に面白い現象だなと感じました。相談し始めの声は弱々しく、自身を認められないという雰囲気でした。この方は、周りから「お前はダメだ」「一人では何もできない」と言われてきたようです。今まで考えてこなかった違う視点で話をしただけですが、力強さを引き出してこられました。
この方は、自分の新たな展開の物語を紡いでいたのではないかと思います。相談を受ける方は、解決策を一所懸命探して伝えようとしたくなりますが、そこに落とし穴があるように感じます。
「どうしたらいいですか?」
「〇〇をするべきですか、しない方がいいですか?」
「それをしたら必ず良くなりますか?」
自分がどうしていけばいいか相談者に決めさせようと迫ってきます。でも、話を聞いていると他の相談機関で話をしていて、提案を聞いていました。同じことをここでも尋ねてきます。尋ねたくなる気持ちはわかりますが、「〇〇すべきです」「△△したらどうですか」等の言葉を並べても、その人が納得しなければ行動しないでしょう。現に、前に聞いた提案を実行していないのですから。
人は、数字の羅列や関係性が見えない箇条書きを覚え続けることは難しいですが、物語は長く覚えていられると言います。小説や映画のストーリーをおぼろげでも思い出すことができます。そして、自分の周りで起きていることもエピソードにして理解しています。物語を語ること、そこを大切にしていきたいと感じています。